エンジニアのためのフェルミ推定:実務で役立つ思考法と活用事例

プロジェクト管理

「このシステムの負荷はどのくらい?」「この機能の開発にどれくらいの工数がかかる?」

エンジニアとして働いていると、正確なデータがない状況でも素早く概算を出す必要に迫られることがよくあります。そんなときに役立つのがフェルミ推定です。

フェルミ推定は、限られた情報をもとに論理的な推論を積み重ね、素早くおおよその数値を導き出す手法です。本記事では、エンジニアが業務でフェルミ推定をどのように活用できるのかを解説し、具体的な活用事例を紹介します。


フェルミ推定とは?エンジニアに必要な理由

エンジニアは、システムの規模感やリソースの必要量を素早く把握する能力が求められます。フェルミ推定を身につけることで、データが不十分な状況でも合理的な推論を行い、的確な意思決定ができるようになります。

フェルミ推定とは?

フェルミ推定とは、物理学者エンリコ・フェルミが得意とした、限られた情報をもとに論理的な推論を積み重ね、おおよその数値を導き出す手法です。例えば、「シカゴにピアノ調律師は何人いるか?」といった一見すると答えが出せなさそうな問題でも、いくつかの前提を組み合わせることで概算を導き出せます。

エンジニアにとってフェルミ推定は、単なる学問的な手法ではなく、実務で役立つスキルとなります。日々の業務の中で、詳細なデータが揃っていない段階でも素早く概算を出し、意思決定を支援する場面が多くあります。

エンジニアにとってフェルミ推定が重要な理由

フェルミ推定を活用することで、以下のようなメリットがあります。

  • 見積もり精度の向上

    開発工数やサーバー負荷の概算を、データが揃っていない段階でも迅速に計算できます。例えば、「このAPIの開発にどれくらいの時間がかかるか?」をざっくりと見積もる際に役立ちます。

  • 論理的思考の強化

    問題を分解し、仮定を積み重ねることで、論理的に考える力が鍛えられます。これは、システム設計やトラブルシューティングの際にも有効です。

  • 意思決定の迅速化

    正確なデータが揃うのを待たずに、一定の根拠をもって判断できるため、チームの開発スピード向上にも貢献します。特に、プロジェクト初期の段階でリソースの見積もりをする際に便利です。


フェルミ推定の基本的な考え方と手順

フェルミ推定では、問題を分割し、仮定を設定し、計算するという流れを取ります。

フェルミ推定の手順

フェルミ推定では、問題を分割し、仮定を設定し、計算するという流れを取ります。以下の手順で進めるのが一般的です。

  1. 問題を定義する

    まず、推定したい対象を明確にします。

    例:「1日にこのWebサービスにアクセスするユーザー数を推定する」

  2. 論理的に分解する

    問題をシンプルな要素に分解し、計算しやすくします。

    例:「日本の総人口」「インターネット普及率」「ターゲット層の割合」などに分解

  3. 仮定を置く

    正確なデータがない場合でも、一般的な知識や経験をもとに、現実的な仮定を立てます。

    例:「日本の人口は1.25億人」「そのうちインターネットを使うのは80%」

  4. 計算する

    分解した要素を掛け合わせて、おおよその値を求めます。

    例:1.25億 × 0.8 × 特定サービスの利用率 = 推定値

✅ フェルミ推定のコツ

  • オーダーの概算を意識する 100、1,000、10,000といった大まかな桁数で考えることで、精度よりも「おおよその規模感」を掴むことが重要です。
  • 過去のデータや類似ケースと比較する フェルミ推定の結果を、実際のデータと比較することで、仮定の妥当性を検証できます。

エンジニアがフェルミ推定を活用する具体例

エンジニアの業務では、正確なデータが揃っていない状況でも、迅速に概算を出す場面が多くあります。ここでは、Webサービスの負荷推定開発工数の概算の2つの具体例を紹介します。

1. Webサービスの負荷推定

課題:「新機能リリース後のトラフィック増加はどれくらいか?」

新機能をリリースする際、どれくらいのサーバー負荷が増加するのかを把握することは重要です。フェルミ推定を使って、概算してみましょう。

フェルミ推定によるアプローチ

  • 現在のユーザー数:100万人
  • 新機能の利用率:30%
  • 1ユーザーあたりのリクエスト数:10回/日
  • 推定されるリクエスト増加数100万 × 0.3 × 10 = 300万リクエスト/日

このように、大まかな負荷を事前に見積もることで、インフラ設計やスケール戦略を立てやすくなります。

2. 開発工数の概算

課題:「このAPIの開発にはどれくらいの時間がかかる?」

新規APIを開発する際、工数の見積もりはスケジュール管理に欠かせません。フェルミ推定を活用すれば、細かいタスク分解をする前でも、おおよその開発時間を把握できます。

フェルミ推定によるアプローチ

  • 基本的なCRUD APIの開発時間:10時間
  • 追加する認証・認可の工数:5時間
  • テストとデプロイ時間:5時間
  • 合計推定時間10 + 5 + 5 = 20時間

このように、ざっくりとした見積もりを立てることで、工数管理やスケジュール調整がスムーズになります。

✅ フェルミ推定を活用するメリット

  • 素早く概算できる:事前に詳細なデータがなくても、大まかな見積もりが可能
  • 論理的に考える習慣がつく:数値の根拠を考えることで、思考の整理がしやすくなる
  • 意思決定がスピードアップ:開発やインフラ設計の初期段階で素早く判断できる

エンジニアの業務には、フェルミ推定が役立つ場面が多いため、積極的に活用していきましょう!


フェルミ推定を磨くためのトレーニング方法

フェルミ推定を実務で活かすには、日常的にトレーニングを積むことが重要です。ここでは、フェルミ推定のスキルを向上させるための具体的な練習方法を紹介します。

1. 身近なものを数値で推定する

日常生活の中で、フェルミ推定を使って考えるクセをつけると、実務でも素早く概算を出せるようになります。

例題:

  • 「この駅で1日に何人が乗り降りするか?」
    • 人口、通勤率、駅の規模などから概算
  • 「このカフェの売上はどれくらいか?」
    • 席数、回転率、平均単価などから計算

こうした問いを考え、ざっくりとした計算をしてみることで、フェルミ推定のスキルが鍛えられます。

2. 過去のデータと比較する

フェルミ推定を行った後、実際のデータと比較することで、自分の推定精度を確認できます。

トレーニング方法:

  1. まずは自分でフェルミ推定を行い、概算を出す
  2. 実際の統計データや公式データと照らし合わせる
  3. 誤差を分析し、どこを改善できるか考える

たとえば、「日本のコンビニの数」を推定した後、実際の統計データと比較して、どの仮定が正しかったのか、どこがズレていたのかを確認すると良いでしょう。

3. 仕事の中で意識して使う

実務でフェルミ推定を活用することで、実践的なスキルが身につきます。

具体的な活用例:

  • 「このシステムの負荷はどれくらいか?」 → 既存のアクセスデータをもとに概算
  • 「この機能の開発にかかる時間は?」 → 過去の類似機能と比較して計算
  • 「サーバーコストはどれくらいになるか?」 → 1リクエストあたりのコストをもとに推定

✅ フェルミ推定を鍛えるメリット

  • 素早く概算を出せるようになる
  • 論理的に考える力が身につく
  • データがない場面でも判断がしやすくなる

日常や仕事でフェルミ推定を意識的に使うことで、実践的なスキルとして身につけていきましょう!


まとめ:フェルミ推定を活用してエンジニアの思考力を強化しよう

フェルミ推定は、エンジニアにとって非常に有用なスキルです。

  • 見積もり精度の向上
  • 論理的思考力の強化
  • 迅速な意思決定

実務で活用できる場面も多く、特に負荷試算や開発工数の見積もりなどに役立ちます。

日常のちょっとした疑問をフェルミ推定で解決する習慣をつけることで、エンジニアとしての問題解決力を高めていきましょう!

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