20名前後の小規模チーム向け・比較と失敗しない運用設計
はじめに
Google Workspace(旧 G Suite)は、
「Googleの法人向けサービス」という認識はあっても、
- 自社規模(20名前後)に本当に合うのか
- Microsoft 365 以外に検討すべき選択肢はあるのか
- 導入後、現場でちゃんと使われるのか
といった点が見えづらく、導入判断を先送りにされがちです。
特に20名前後の小規模チームでは、
- ツールを増やしすぎると管理が回らない
- ルールを厳しくすると誰も使わなくなる
- 属人化を防ぎたいが、運用設計に時間をかけられない
という現実的な制約があります。
本記事では、20名前後のチーム規模を前提に、
- Google Workspaceの位置づけ
- 他サービスとの現実的な比較
- 導入判断の考え方
- 導入後に失敗しにくい運用ルール
を、「導入を決めるために必要な粒度」で整理します。
Google Workspaceの位置づけ
Google Workspaceは「業務を回すための基盤サービス」
Google Workspaceは、単なる
- メール
- 文書作成
- ファイル共有
の集合体ではありません。
根底にある設計思想は、
- 情報は一か所に集める
- 複数人で同時に扱う
- 未完成の状態から共有する
- 履歴を残しながら更新し続ける
というチーム作業前提の考え方です。
20名前後のチームでは、
- 誰が最新を持っているか分からない
- 確認待ちで仕事が止まる
- ファイルを探す時間が無駄になる
といった問題が表面化しやすく、この思想に合うかどうかが導入後の満足度を大きく左右します。
導入判断の目安(20名前後のチーム向け)
Google Workspaceが向いているケース
次の項目に多く当てはまる場合、Google Workspaceは有力な選択肢です。
- メンバー数が10〜30名程度
- ファイル管理が個人PCやローカルに散らばっている
- メール・資料・チャットが分断されている
- 完成度よりスピードを重視したい
- 途中でも共有して進めたい文化を作りたい
Microsoft 365を軸に検討した方がよいケース
一方で、次のような場合は Microsoft 365 を中心に検討した方が安全です。
- Excelの高度な帳票・マクロが業務の中心
- 社外提出用の完成度の高い資料が最優先
- 既存のOffice資産を多く抱えている
どちらが優れているかではなく、業務の性質に合っているかが判断基準になります。
比較されやすいサービス(365以外も含めて)
20名前後のチームで、実際によく比較対象になるサービスを整理します。
Microsoft 365
最も王道の比較対象です。
向いているケース
- Excel・Wordの高度な機能が必須
- 既存のOffice資産が多い
- 社外提出用の帳票・資料が中心
20名前後チームでの注意点
- 同時編集やレビューの軽快さはWorkspaceに劣る
- ファイル管理が個人フォルダに寄りやすい
Notion
小規模チームで急速に利用が広がっているサービスです。
特徴
- 情報をデータベースとして整理できる
- Wiki・タスク管理・議事録を一体化できる
20名前後チームでの注意点
- 文章執筆の快適さはGoogleドキュメントに劣る
- 日常業務の流れを作るには設計コストが高め
NotionはWorkspaceの代替というより、補完ツールとして併用されるケースが多いのが実情です。
Dropbox + Paper
Dropboxをすでに利用している企業で検討されやすい構成です。
特徴
- ファイル管理に強い
- Paperで簡易的なドキュメント作成が可能
注意点
- ドキュメント機能は限定的
- 業務全体の基盤としては役割が限定される
Slack + 各種外部ツール
統合サービスではなく、複数ツールを組み合わせる運用です。
注意点
- 情報が分散しやすい
- 管理・権限設計の手間が増える
- 20名前後ではオーバースペックになりやすい
比較まとめ(20名前後チーム視点)
| サービス | 強み | 弱み |
|---|---|---|
| Google Workspace | 共有・同時編集・履歴管理 | 高度な帳票 |
| Microsoft 365 | 文書完成度・Excel | 共同作業の速度 |
| Notion | 情報整理・DB管理 | 文章執筆 |
| Dropbox | ファイル共有 | 運用基盤になりにくい |
| ツール組合せ | 柔軟性 | 管理が複雑 |
導入後に効いてくるGoogle Workspaceの考え方
ファイルは「個人のもの」ではなく「チームの資産」
20名前後のチームでは、一時的な個人管理がそのまま属人化につながります。
最初から共有ドライブに置き、権限で制御する運用を前提にすることが重要です。
未完成でも共有する前提で使う
Google Workspaceの最大の強みは、途中経過を前提にした共同作業です。
- 構成案
- 下書き
- メモ段階
から共有することで、確認待ちや手戻りを大幅に減らせます。
よくある失敗パターン(20名前後チーム)
導入後、次の失敗は非常に起こりやすいです。
- フォルダを作りすぎて全体像が分からない
- 共有したつもりで権限が閉じている
- コメントを使わず、口頭やチャットで修正指示を出す
これらはツールの問題ではなく、運用を揃えていないことが原因です。
小規模チーム(20名前後)向けおすすめ運用ルール例
フォルダ構成はシンプルに
原則は3階層以内にします。
- 共有ドライブ
- プロジェクト名
- 年度 / フェーズ
- プロジェクト名
ファイル名の最低限ルール
- 日付(YYYYMMDD)
- 内容
- 状態(下書き/レビュー中/確定)
状態と次アクションを冒頭に明記
【状態】レビュー中
【次アクション】〇〇さん確認
コメントは「会話」として使う
修正指示だけでなく、
- 判断理由
- 迷っている点
を残すことで、後から見た人にも文脈が伝わります。
暗黙ルールを最小限、言語化する
- 最終判断者は誰か
- 勝手に削除しない
- 修正はコメント経由
この3点だけでも、混乱は大きく減ります。
まとめ
Google Workspaceは、正しく使えば便利なツールではありません。
使い方を揃えたチームほど強くなる基盤サービスです。
20名前後のチームでは、
- 共有前提
- 未完成OK
- ルールは最小限
この考え方を押さえるだけで、仕事のスピードと透明性は大きく変わります。
スピードと共有を重視するチームにとって、Google Workspaceは非常に相性の良い選択肢です。

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