非同期通信の実装方法として長年使われてきた jQuery .ajax() と、現代の標準APIである fetch()。
どちらを使うべきかは、プロジェクトの環境や目的によって異なります。
この記事では、両者の「違い・書き方・メリット/デメリット・実務での選び方」をわかりやすく整理し、最適な判断ができるようにまとめています。
.ajax() と fetch() の基本的な違い【最初に理解すべき位置づけ】
まずは両者がどのような背景・思想で作られたAPIなのかを整理し、全体像を掴むことから始めます。
1. jQuery .ajax()とは【XHRベースで互換性に強い】
jQuery が提供する高機能な Ajax ラッパーで、XMLHttpRequest を扱いやすくした APIです。
主な特徴
- ブラウザ差異を吸収してくれる
- オプションが豊富で柔軟
- 古いIEを含むレガシー環境でも動作
- jQuery依存があるため軽量ではない
2. JavaScript fetch()とは【Promiseベースのモダン標準】
ES6以降に登場した、ネイティブのHTTP通信APIで、Promise / async-await を前提とした記述ができます。
主な特徴
- 依存なしで軽量・高速
- 可読性が高くバグが減る
- 標準APIのため将来性が高い
- IEでは動作しない(大きな注意点)
比較表(要点のみ)
| 項目 | .ajax() |
fetch() |
|---|---|---|
| ベース | XHR | Fetch API |
| 非同期モデル | コールバック | Promise / async-await |
| 依存 | jQuery必須 | 不要 |
| ブラウザ対応 | IE可 | IE不可 |
| 記述量 | 多い | 少ない |
GETリクエストによる書き方比較【基本を押さえる】
ここでは、.ajax()とfetch()の「最も基本的な使い方」を比較し、記述スタイルの違いを直感的に理解します。
1. .ajax() の基本構文
$.ajax({
url: '/api/data',
method: 'GET',
success: function(res) {
console.log(res);
},
error: function(xhr) {
console.error(xhr);
}
});
特徴まとめ
- 設定がオプション化されて分かりやすい
- ただしコールバックが増えると可読性が悪化
2. fetch() の基本構文(Promise)
fetch('/api/data')
.then(res => {
if (!res.ok) throw new Error('Network error');
return res.json();
})
.then(data => console.log(data))
.catch(err => console.error(err));
async/await版(実務ではこちらが主流)
async function getData() {
try {
const res = await fetch('/api/data');
if (!res.ok) throw new Error('Network error');
const data = await res.json();
console.log(data);
} catch (err) {
console.error(err);
}
}
メリット・デメリット比較【選択基準が明確になる】
.ajax() と fetch() の長所・短所を簡潔にまとめ、どちらを使うべきか判断しやすいよう整理します。
1. .ajax() のメリット・デメリット
◎メリット
- IEを含む幅広いブラウザで動作
- オプションが豊富(タイムアウトなど)
- jQuery使用中の環境で統一性が高い
✕デメリット
- jQuery読み込みが必須で重い
- コールバック地獄になりやすい
- モダン開発と相性が悪い
2. fetch() のメリット・デメリット
◎メリット
- 依存なしで軽量
- async/await により極めて読みやすい
- 標準APIのため将来性が高い
✕デメリット
- IE非対応
- デフォルトでタイムアウトなし
- 進捗イベントを扱いにくい
実務で迷わない選択基準【最短で判断できる】
プロジェクトの状況に応じて、どちらを採用すべきかを簡単に判断できるように整理します。
| 条件 | 推奨API | 理由 |
|---|---|---|
| IEサポートが必要 | .ajax() |
fetchは動作不可 |
| 新規開発(React/Vue/SPAs) | fetch() |
モダン構文と相性◎ |
| jQuery中心の既存システム | .ajax()継続 or 段階移行 |
工数最小 |
| ページを軽量化したい | fetch() |
ライブラリ不要 |
POST送信の実用例【現場で最も使うコード】
非同期通信では、サーバーへデータを送信する「POSTリクエスト」が最も利用頻度の高い処理の1つです。ここでは、実務でよく使われる JSONデータの送信方法 を、fetch() と .ajax() の両方で比較しながら確認します。
1. fetch の例(推奨:async/await)
async function submitData() {
try {
const res = await fetch('/api/submit', {
method: 'POST',
headers: { 'Content-Type': 'application/json' },
body: JSON.stringify({ name: 'Taro', age: 30 })
});
if (!res.ok) throw new Error('送信エラー');
const data = await res.json();
console.log(data);
} catch (err) {
console.error(err);
}
}
2. .ajax() の例
$.ajax({
url: '/api/submit',
method: 'POST',
contentType: 'application/json',
data: JSON.stringify({ name: 'Taro', age: 30 }),
success: function(res) {
console.log(res);
},
error: function(xhr) {
console.error(xhr);
}
});
まとめ:どちらを使うべきか?【最終結論】
この記事の内容を踏まえ、状況ごとに最適な選択は以下のとおりです。
結論:プロジェクトの状況に応じた使い分けが最適
- 新規開発 → fetch が最適解(軽量・可読性・標準化)
- 既存の jQuery 環境 → 無理に移行しなくて良い
- IE対応が必要 →
.ajax()一択
今後の技術選定の指針
- Web標準である fetch は今後さらに普及する
- 長期的には fetchベースの開発が保守性・互換性で有利
- 移行する場合は段階的に行うことが現実的

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