Visual Studioで開発していると、「細かいコミットを1つにまとめて履歴をきれいにしたい」と思うことがあります。ところが、Visual StudioのGUIにはGitの「Squash(コミット統合)」機能が標準搭載されていません。
この記事では、Visual Studioだけでできる代替手段から、CLI(コマンドライン)やPull Requestを使った正式なSquash方法までを整理して解説します。最終的に、自分の開発スタイルやチーム運用に最適な方法を選べるようになります。
🧩 目的に応じたコミット統合手段の比較
まず、これから紹介する3つの方法を全体像として比較します。
| 方法 | 対応する章 | 実現手段 | 難易度 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| ① Rebase -i | 💻 CLIまたは外部ツールで統合 | CLI操作が必要 | ★★★★☆ | 最も正確に履歴整形可能 |
| ② Pull RequestでSquash Merge | 🚀 PR時にまとめる | GitHub/Azure DevOpsでGUI対応 | ★☆☆☆☆ | チーム運用に最適・安全 |
| ③ Reset+再コミット | 💡 Visual Studio内で完結 | GUIのみで実現 | ★★☆☆☆ | 手軽に1つのコミットへ統合 |
✅ 結論:Visual Studio単体で完全なSquashは不可
Visual StudioのGUIでは、git rebase -i による本来のSquash操作には対応していません。ただし、「Reset+再コミット」や「PRでのSquash Merge」を活用すれば、ほぼ同じ結果を得られます。
各方法の対応状況まとめ
| 方法 | GUI対応 | 補足 |
|---|---|---|
| Rebase -i(CLIで統合) | ❌ 非対応 | コマンドまたは外部ツールが必要 |
| Pull RequestでSquash Merge | ✅ 対応 | PR作成時に「Squash and merge」を選択 |
| Reset+再コミット(手動統合) | ⚙️ 部分対応 | GUIだけで再現可能(手順あり) |
💻 ① CLIまたは外部ツールでコミットをまとめる方法
履歴を正確に整理したい場合は、CLIでのインタラクティブリベースが最も柔軟で強力です。
コマンド例
git rebase -i HEAD~5
# まとめたいコミットを "s" または "squash" に変更
指定範囲内の複数コミットを1つに統合できます。

GUIで行いたい場合
Visual StudioにはリベースGUIがないため、以下のツールを併用すると便利です。
- Git Extensions
- GitKraken
- Fork
これらを使えば、マウス操作でリベースやSquashを実行でき、履歴整理の効率が大幅に向上します。
Visual Studio+外部ツールの併用は、最も安定した運用方法です。
🚀 ② Pull Requestで1つのコミットにまとめる方法
GitHubやAzure DevOpsを利用している場合は、Pull Request時のSquash Mergeが最も簡単で安全です。開発ブランチで細かくコミットしても、mainブランチへマージする際に自動で1つにまとめられます。
手順
- GitHubの場合:PRを作成 → 「Merge pull request」→ 「Squash and merge」を選択
- Azure DevOpsの場合:PR完了時に「Squash commit」オプションを有効化
💡 補足:
PRでSquashすると、デフォルトではPRタイトルがコミットメッセージとして使用されます。必要に応じて、マージ前にメッセージを編集可能です。
この方法は履歴をきれいに保ち、他メンバーとの整合性も保ちやすいため、チーム開発で最も推奨される手段です。
💡 ③ Visual Studioだけでまとめる方法(Reset+再コミット)
CLIを使わずに済ませたい場合は、Visual StudioのGUIで「Squash相当」の操作を行えます。以下の手順に従えば、複数のコミットを1つにまとめることが可能です。
手順
- 対象ブランチをチェックアウト
「Gitリポジトリ」ウィンドウから作業対象ブランチを選択します。
- 履歴を開く
対象ブランチを右クリック → 「履歴を表示」を選択。
- まとめたい直前のコミットを選択 → [Reset] → [Mixed(変更を保持)]
これにより、選択したコミット以降の変更が作業ツリーに戻ります(
git reset --softと同様)。 - 変更を確認し、新たに1回だけコミット
すべての修正を1つのコミットとしてまとめます。
👉 これで、GUIだけで実質的な「コミット統合」を再現できます。
⚠️ 注意:Resetはコミットを巻き戻す操作です。誤ったコミットを選ぶと履歴が戻せなくなる場合があります。実行前に対象を確認し、Push前の段階で行うのが安全です。
🔧 Push済みコミットをまとめたい場合の注意点
「pushしたあとでも、rebaseやresetは使えるの?」という疑問を持つ方も多いでしょう。
結論としては、自分専用ブランチならOK、共有ブランチではNGです。
✅ 自分専用ブランチならOK
他の人がそのブランチを触っていない場合は、履歴を書き換えても安全です。
変更後は次のように上書き push(force push)を行います。
git push --force-with-lease
-force-with-leaseは安全な上書きオプションで、他人のpushがある場合はエラーになります(事故防止機能)。
❌ 共有ブランチではNG
mainやdevelopなど複数人が使うブランチでresetやrebaseを行うと、履歴の不整合が発生します。
共有ブランチでは、必ずPull Request経由でSquash Mergeしましょう。
🧩 操作判断まとめ
| 状況 | reset/rebase可能? | push方法 |
|---|---|---|
| ローカルのみ(未push) | ✅ OK | 通常push |
| 自分専用ブランチ(push済) | ✅ OK | git push --force-with-lease |
| 共有ブランチ | ❌ NG | PRでSquash Merge |
✅ まとめ
- Visual Studio単体ではSquash機能は未搭載
- 個人開発:Reset+再コミットで対応
- チーム開発:PRでSquash Mergeを利用
- 正確に履歴を整えたい場合:CLIや外部ツールを活用
履歴を整えることで、過去の変更を追いやすくなり、チーム全体の開発効率も向上します。


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