「PDCAを回そうと言われても、実務が忙しくて続かない…」
「振り返りをしても、次に活かす仕組みにならない…」
そんな悩みを抱えるシステムエンジニア向けに、この記事では “PDCAを実務で回せる形に落とし込む” ことを目的として解説します。キレイな理論ではなく、日々のシゴトでそのまま使える視点・手法にこだわっています。
1. なぜPDCAはシステムエンジニアにとって難しいのか
PDCAは有名なフレームワークですが、特にシステム開発の現場では以下の理由で「回しにくさ」が生じます。
● 仕様変更が多く、計画どおり進みにくい
計画を立てても外的要因で崩れやすい。
● 優先順位が頻繁に変わる
急ぎの問い合わせ・バグ対応・依頼変更が日常的に発生。
● 属人化が進みやすく、振り返り素材が蓄積されない
過去の判断理由や作業ログが残らず、改善につながらない。
つまり、システムエンジニアは 「計画が崩れやすい環境」 にいます。だからこそ、形式ではなく「小さく柔軟に回すPDCA」が必要です。
2. まず理解すべきPDCAの“本質”とは
PDCAの本質は、完璧な計画を立てることではなく、改善サイクルを回し続けること です。
● 小さく始めることで継続性が生まれる
● 計画の精度は、サイクルを回すほど上がる
● 行動できるレベルの具体度が重要
最初から100点のPlanは不要です。動きながら60→70→80点へと近づけていく仕組みが“正しいPDCA”です。
3. Plan(計画)のつまずきポイントと改善方法
Planでつまずく最大の理由は 計画が抽象的すぎること です。
よくある失敗例
- 「設計書を仕上げる」など粒度が大きすぎる
- タスクの依存関係が可視化されていない
- 明日すぐ着手できるレベルに分解されていない
改善のポイント
● タスクは“30分〜1時間で完結する大きさ”まで分解する
● 技術調査タスクはさらに細かくする
例:API調査 → 認証確認 → レスポンス形式確認 → 実装案作成
● 目的・締切・完了条件(Definition of Done)を明確にする
● WBS(作業分解)を「線表」ではなく「ToDo化」して運用する
良い計画とは、書いた瞬間から手が動く計画 です。
4. Do(実行)で失敗しやすいパターン
Doは単に作業するだけでなく、計画を実行できる状態に維持すること も含みます。
よくある失敗例
- タスクの抽象度が高く、着手に時間がかかる
- 並行しすぎて切り替えコストが高い
- 優先順位が曖昧になり、緊急対応ばかりになる
対策
● 1日にやることは3つに絞る(WIP制限)
並行作業を減らすだけで生産性が大幅に上がります。
● 「優先順位が変わる前提」でPlanを柔軟に改訂する
● 作業ログ(今日やったこと)を必ず残す
Check(振り返り)の材料になります。
5. Check(振り返り)が甘いと永遠に改善できない
多くの人は「反省」を振り返りだと誤解しています。しかし、Checkの目的は 改善のための事実収集 です。
SEが陥りがちな失敗
- 「忙しかった」で終わる
- 作業ログがなく、原因が曖昧
- KPIがないため評価できない
改善方法
● 毎日10分で“事実だけ”を書く
- できたこと
- できなかったこと
- 予定とのズレ
- ズレの原因(事実ベース)
● 使えるKPI例(SE向け)
- 作業時間(実績 vs 見積)
- バグ件数・工数
- 手戻り発生要因
- レビュー指摘の傾向
“事実の蓄積”が、次のActionにつながる材料になります。
6. Act(改善)を“次のPlanにつなげる”技術
Actは 反省を書くことではなく、行動を変えること です。
よくある失敗
- 気づきは書くけど、次のサイクルに反映されない
- 改善が抽象的(例:もっと早く動く)
改善ポイント
● 改善は「次に何をするか」まで具体化する
例:
- × 設計精度を上げる
- ○ 仕様の不明点を朝イチで5つ洗い出して担当へ確認する
● 改善内容をテンプレ化し、仕組みにする
- 毎朝の確認ルーチン
- チェックリスト化
- 自動化ツールの導入
仕組みに落とし込むことで、PDCAは“継続可能なサイクル”になります。
7. SEが実務ですぐ使えるPDCAテンプレート
以下は、そのままコピーして日報やNotionに使えるPDCAテンプレートです。
【日次PDCAシート】
Plan:今日やること(3つまで)
Do:実施内容(ログ形式)
Check:できた/できなかった/ズレの理由
Act:明日の改善点
【週次レビューシート】
- 今週の達成と課題
- 工数の誤差と理由
- 手戻り要因の特定
- 来週の改善アクション
【プロジェクトPDCA】
- 要件定義フェーズの改善点
- テスト工程のバグ傾向
- コミュニケーションのボトルネック
8. PDCAを継続できる人と挫折する人の違い
PDCAが続くかどうかは、才能ではなく 仕組みの有無 です。
継続できる人
- タスクの粒度が小さい
- 事実ベースで振り返る
- 改善を習慣化する仕組みを持つ
挫折する人
- 抽象的な計画
- 感情ベースの振り返り
- 改善が行動に落ちていない
PDCAは「頑張るもの」ではなく、自然と回る仕組みを作るもの です。
9. まとめ:PDCAは“回すものではなく、回り続ける仕組み”にする
システムエンジニアにとってPDCAは、自己改善だけではなく 開発プロセス全体の品質向上につながる武器 です。
今日から始められる最初の一歩は、難しいことではありません。
「今日やる3つのPlanを書く」
まずはこれだけでOKです。そこから少しずつ、あなたのPDCAは形をつくり始めます。

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