ローカルのようにリモートを呼び出す:RPCの仕組みと活用ポイント

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「システム間通信が複雑で、もっとシンプルにできないか?」──そんな悩みを抱えるエンジニアは少なくありません。RPC(Remote Procedure Call)は、リモート環境にある関数や手続きを、あたかもローカルにあるかのように呼び出せる仕組みです。本記事では、RPCの基本構造、Web APIとの違い、モダンな開発における活用方法をわかりやすく整理し、実務にどう適用できるかを解説します。


RPCとは何か?基本概念と仕組み

RPC(Remote Procedure Call)は、プログラムがネットワーク越しにある関数や手続きを、あたかも自分のローカル関数であるかのように呼び出せる通信手法です。これにより、開発者は「どこで処理が行われているか」を意識せずにコードを書くことができます。

✅ ポイント

  • クライアント側は、リモートの手続きを直接呼び出すような記述が可能
  • 通信の詳細はRPCライブラリが抽象化してくれるため、実装が簡素化される

基本的な流れは以下のとおりです:

  1. クライアントがリモート手続きを呼び出す(例:GetUser()
  2. 呼び出し内容が「スタブ(Stub)」に渡され、ネットワーク経由でサーバーに送信
  3. サーバー側のスタブが関数を実行し、結果を取得
  4. 結果をクライアントに返却し、まるでローカル処理のように受け取る

この構造は「スタブ」や「シリアライズ/デシリアライズ」「トランスポート層(例:HTTP/2)」といった要素に支えられており、言語やプラットフォームを超えて利用できる柔軟性があります。

✅ ポイント

  • クライアントとサーバーの関数定義を揃えるため、事前にスキーマ定義(IDLなど)を使うことが多い
  • 通信処理が見えづらいため、エラー処理やロギングの工夫が必要

この仕組みは、マイクロサービスやクラウドネイティブなアーキテクチャでのサービス間連携において、特に効果を発揮します。開発の生産性を高めつつ、システム間の結合度を制御するための重要な技術となっています。


RPCとREST APIの違いとは?

RPCとREST APIは、どちらも異なるシステム間で通信するための手段ですが、根本的な設計思想と用途が異なります。シンプルに言えば、RPCは「機能を呼び出す」ことにフォーカスし、RESTは「リソースを操作する」ことを重視しています。

✅ ポイント

  • RPC:createUser()getOrderDetails()のように関数単位で呼び出し
  • REST:POST /usersGET /orders/{id} のようにリソースに対する操作

RPCは関数ベースで設計されるため、複雑なビジネスロジックを直感的に記述しやすく、通信量も少なくなる傾向があります。gRPCのようにバイナリ形式で通信するプロトコルでは、高速な処理と省データ化が可能です。

一方REST APIは、HTTPメソッド(GET、POST、PUT、DELETEなど)を活用し、標準的な設計ルールに則ることで、開発者が理解しやすくなっています。また、ツールやフレームワークの対応が豊富なため、Webサービス全体での互換性も高いです。

✅ 選定の目安

  • RPC向き:高速な通信、処理単位で明確なAPI設計、内部マイクロサービス間連携
  • REST向き:外部公開API、リソース中心の設計、標準化が求められる環境

gRPCとRESTの比較例(ユーザー情報取得)

  • ✅ RPC(gRPC):GetUser(GetUserRequest) returns (User)
  • ✅ REST:GET /users/{id} → JSONレスポンスでUser情報を返す

✏️ 比較表

このように、両者は補完関係にあり、目的やシステムの性質に応じて適切に選ぶことが重要です。開発効率と保守性のバランスを見極めるためにも、違いを正しく理解しておきましょう。

項目 RPC REST API
呼び出し方法 関数(手続き)単位 リソース単位
通信形式 通常はバイナリまたはJSON HTTP + JSON
柔軟性 高いが、設計ルールが曖昧 明確な設計ルール
学習コスト やや高め 比較的低い

RPCは、特定の処理を高速に実行したいケースに向いており、REST APIは標準化や汎用性を重視する場合に選ばれます。


主要なRPCフレームワークと選定ポイント

RPCの仕組みを実装するためのフレームワークは数多く存在し、それぞれ異なる特徴を持っています。プロジェクトの要件や開発チームのスキルセットに応じて、適切な選定を行うことが重要です。ここでは代表的な3つのフレームワークを紹介します。

gRPC(Google製)

  • HTTP/2とProtocol Buffersを使用した高性能なRPCフレームワーク
  • 双方向ストリーミングや認証、デッドライン(タイムアウト)などの高度な機能を内包
  • 多言語対応で、Go、C#、Java、Pythonなど主要言語で利用可能

gRPCはパフォーマンス重視のマイクロサービス構成に最適です。スキーマベースな設計により、型安全なAPI定義が可能になります。

JSON-RPC / XML-RPC

  • 非常に軽量なプロトコルで、HTTP上でJSONまたはXMLを使って通信
  • 実装がシンプルなため、小規模システムやレガシー環境との接続にも向いています

シンプルさを重視するシーンや、非バイナリ通信が求められる場面に適しています。

Thrift(Apache製)

  • Facebookによって開発された汎用RPCフレームワーク
  • 独自のIDL(Interface Definition Language)により、高い柔軟性と保守性を確保
  • サービス定義に基づき多言語クライアントとサーバーコードを自動生成可能

言語横断的なシステム構築や、大規模分散システムでの採用実績が多いのが特徴です。

✅ フレームワーク選定の観点

  • 通信形式(バイナリ or JSON/XML)
  • 利用するプログラミング言語との親和性
  • ストリーミングや認証など、必要な機能の有無
  • API設計時の堅牢性(スキーマや型チェックの有無)

こうした点を踏まえ、プロジェクトの要件に最も適したRPCフレームワークを選択することが、開発の効率と品質に直結します。


事例:マイクロサービスでのgRPC導入効果

マイクロサービスアーキテクチャを採用している企業にとって、サービス間通信の効率はパフォーマンスやスケーラビリティに直結します。あるECサイトでは、これまでREST APIでサービス連携を行っていましたが、通信量の増大やレスポンス遅延といった課題に直面していました。そこで導入されたのがgRPCです。

✅ 導入の背景

  • REST APIのJSON通信によるデータ肥大化
  • 同期処理が多く、ユーザー体験に影響するレスポンス遅延
  • サービス増加による保守の複雑化

✅ gRPC導入後の改善効果

  • 通信データ量が最大60%削減:Protocol Buffersによるバイナリ圧縮
  • レスポンスタイムが平均30%高速化:HTTP/2の多重化と軽量プロトコルの効果
  • 型安全性の向上によりバグが減少:IDLベースでAPI定義が明確に

ASP.NET Coreの例(gRPCサービス定義)

service ProductService {
  rpc GetProduct (ProductRequest) returns (ProductReply);
}

このように、gRPCのスキーマ駆動設計と高効率な通信プロトコルは、マイクロサービス間のやり取りを大幅にスリム化します。特にレスポンス速度やデータ量に課題を抱えているシステムでは、gRPCへの移行が有効な打ち手となり得ます。

また、gRPCではコード生成が行われるため、クライアント/サーバー間の仕様ズレが防止され、開発体験の向上にも寄与します。このような成功事例は、RPC導入の参考として非常に有用です。


RPCを導入する際の注意点とデメリット

RPCは非常に便利な仕組みですが、導入すればすべてが良くなるというわけではありません。特にマイクロサービスや分散システムにおいては、設計の甘さがシステム全体の脆弱性につながることもあります。以下の注意点を事前に把握しておくことが重要です。

デバッグが難しい

RPCはローカル関数のように見えるため、通信の失敗やリトライ処理などの問題が隠れやすいです。トレースログや監視ツールを活用し、どこでエラーが発生したのかを明示する仕組みが必要です。

サービス間の結合度が高くなりがち

関数名や引数の構造に強く依存するため、クライアントとサーバーが同時に変更される必要が出てくることがあります。これはマイクロサービスの本来の「疎結合」設計に逆行する恐れもあります。

ネットワーク信頼性が前提になる

RPCはあくまでリモート呼び出しなので、ネットワークが不安定な状況では障害の原因になり得ます。特に同期的なRPCは、タイムアウトや再試行の設計をしっかり行わないとシステム全体が巻き込まれる可能性があります。

可視性の欠如

関数の呼び出し先が抽象化されていることで、システム全体の通信フローが把握しづらくなることがあります。分散トレーシングの仕組みを取り入れ、通信経路を明示的に管理することが推奨されます。

対策ポイント

  • プロキシ層やリトライ制御の導入
  • IDLを使った明確なインターフェース定義
  • タイムアウト・リトライ・フォールバックの明示的な設計
  • OpenTelemetryなどの可視化ツール活用

RPCの導入はメリットも多いですが、こうした注意点を踏まえて初めてその効果を最大限に発揮できます。構成の複雑化や運用負荷の増大を防ぐためにも、事前の計画と設計がカギとなります。


まとめ:RPCを正しく理解して、実務に活かす

RPCは、マイクロサービスや分散システムにおいて効率的な通信を実現するための強力な手段です。特にgRPCのようなモダンなRPCフレームワークは、開発の高速化や通信コスト削減といった実利をもたらしてくれます。

✅ 活用が効果的なシーン

  • サービス間通信が頻繁に発生し、レスポンス性能が重要視される場合
  • 型安全なインターフェースで、開発や運用時のバグを減らしたい場合
  • REST APIの肥大化や保守性に課題がある場合

一方で、RPCはその抽象性ゆえにデバッグの難しさやサービス結合度の高さといったリスクも抱えています。これを軽減するには、IDLによる明確な定義リトライ・タイムアウトなどの堅牢なエラーハンドリング設計が不可欠です。

導入時のチェックポイント

  • チームにgRPCなどのRPC設計経験があるか?
  • 可視化ツール(トレーシングやログ)が整っているか?
  • 既存のAPI設計と整合性が取れるか?

RPCは、単なる通信手段ではなく「サービス設計の思想」として取り入れることで、システムの品質と拡張性を大きく高めてくれます。正しく理解し、チームの文化やシステム規模に応じた導入判断をすることが、成功の第一歩です。

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